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社会の片隅から

これまで「中国女性・ジェンダーニュース+」で取り上げてきた日本の社会や運動に関する記事を扱います。

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『週刊文春』の小保方さんの記事についての抗議ハガキ

『週刊文春』2014年3月27日号の記事「『STAP論文』事件のウラに不適切な〝情実人事〟 小保方晴子さん 乱倫な研究室」について、以下の抗議ハガキを、同誌編集部宛てにお送りしました(3月20日。もちろんハガキの表には、私の住所・氏名を記載しています)。


今週号の貴誌の小保方さんについての記事ですが、貴誌の独自のネタは、仮にすべて事実だとしても、しょせんは研究室内部の人間関係や私生活についての話にすぎず、不正人事の証拠はおろか、不倫の話さえ出てこず、彼女の生活の資金源に不正があるとも書かれていません。にもかかわらず、貴誌は「小保方晴子 乱倫な研究室」「『STAP論文』事件のウラに不適切な〝情実人事〟」「共同研究者の家庭にヒビ」「セレブ生活の資金源」などの大きな見出しを付けることによって、なにか彼女が不倫による不正人事でのし上がったり、表に出せない資金源を持っているかような印象を大々的に振りまいています。私も、不正な研究・人事、その組織的背景、社会的発言などについて、きちんと根拠を示して批判する記事でしたら歓迎いたしますが、そもそもプライベートなこと(男女関係や生活費の出所を含む)を書きたてるのがおかしいと思います。今後恐らく研究者としては厳重な処分を受け、重荷を負って再出発するであろう人に対して、それ以上の不当な傷を与えるような記事は止めてください。


「乱倫」という言葉は、『広辞苑』によると、「人倫を乱すこと。人倫の道にそむくこと。特に、男女の間についていう」という意味で、やや漠然としています。しかし、こうした「男女の間について人倫の道にそむくこと」という意味から考えても、また、聞きなれない言葉である以上、多くの人は言葉として類似している「不倫」に類する意味に解釈するであろうことから考えても、「不倫」≒「乱倫」と上記のハガキの中では捉えています。

また、週刊誌の記事の場合、その内容もさることながら、記事の見出しが全国紙や電車の中吊り広告に掲載されるので、大きな影響があると考え、見出しの問題も重視しています。
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フェミニズムに反する上野千鶴子さんの「脱原発」シングルイシュー選挙肯定

上野千鶴子さんが、WANサイトの「ちづこのブログ」(No.59)に「都知事選は脱原発都民投票だ」(2014年1月23日)という一文をお書きになった。

上の一文で、上野さんは以下の2点を論じ、それぞれ次のように答えていると言えるだろう。
(1)「脱原発」という「国政マター」を都知事選の重要な争点にすることの是非→(上野氏の答え)是
(2)「脱原発」という「シングルイシュー」で都知事選をすることの是非→(上野氏の答え)是

私も(1)については、その通りだと思う。しかし、(2)については疑問を感じ、すぐに以下の意見をWANサイトのコメント欄に記した。

上野さんの今回の文章については、今回の都知事選では「脱原発」という争点が重要だという点については、その通りだと思います。けれども、上野さんが「シングルイシュー」を強調しておられる点については、疑問に思います(自民党に対する反論としては、一定の意味はあるにしても)。選挙は各個人のそれぞれの生活や要求をもとにして闘うべきもので、貧困や福祉の問題はもちろんですし、なかなか選挙の争点にはなりにくいジェンダーやフェミニズムの問題はどの選挙でも積極的に争点として押し出していく必要があると思うのです。たとえば、「女性と人権全国ネットワーク」では、各候補に公開質問状を出しておられますね。
http://www.projectjapanwomen.net/#!tochijisen/c226c


実際、(1)の点に関する上野さんの主張は説得力があるが、(2)の点に関する上野さんの主張は説得力に乏しい。たとえば、上野さんは都市博中止という「シングルイシュー」を公約に掲げた青島都政の下でも都政は機能したと述べ、都の福祉行政の担当者のレベルは高いので知事には「へたに手をつけてもらわないほうがよいくらいだ」とおっしゃっている。しかし、かりに上野さんの青島都政認識が正しいとしても、今後、「シングルイシュー」で当選した知事がそれ以外の分野に「へたに手をつけ」ない保証はないし、いくら担当者のレベルが高くても予算がなければどうしようもないだろう。

私がショックだったのは、一貫してフェミニズムの立場に立ってこられた上野さんが「シングルイシュー」論を唱えたことだ。私は、どこかの男性知識人が原発への強い危機感から「シングルイシュー」論を展開するのに対して、「女の問題を後回しにするな」、「女の問題は些末な問題ではない」と発言なさることが、むしろ上野さんにふさわしいと思うのだが……。脱原発政策を大いに主張しつつも、そのためにも都政において性差別解消に取り組む意義も説くこともできる(たとえば原発が差別や家父長制に支えられていることを指摘して)と思うが、それもなさっていない。これではフェミニズムの視点を放棄なさっていると言わざるをえない。

また、上野さんが説かれてきた女性運動の戦争協力への反省などから考えても、朝鮮学校への補助金支給停止やヘイトスピーチ問題(上野さんの名誉のために言えば、これらの点については、上野さんもきちんと意見を表明してこられた)を争点として無視していいとも思えない。

上野さんの一文は、特定の候補者には触れていないが、今回の都知事選の情況から見ると、ひょっとしたら細川候補を推すつもりで書かれたのかもしれない。というのは、今回の選挙では、細川陣営が「脱原発」という「シングルイシュー」を強調してきたからである。しかし、かりに細川候補を推すことが正しいとしても(私が都民だったら彼には投票しないけれど)、「シングルイシュー」論が正しいということにはならない。なぜなら、第一に、誰に投票するにせよ、投票の際には、「シングルイシュー」でなく、女性/ジェンダー政策などについても検討するべきだからだ。もちろん、たとえある候補者の女性/ジェンダー政策が劣っていたとしても、他のさまざまな要素を勘案して、その候補者に一票を投じることはありうるが、そのことと「シングルイシュー」でよしとすることとは異なる。第二に、ジェンダーやフェミニズムを争点として押し出すことによって、各候補者に、その点に関してより良い公約をさせることができる場合があるからである。候補者への働きかけや公開質問状の送付・督促、候補者相互の論戦の過程などで、候補者が当初よりもきちんとした政策を出さざるを得なくなるケースはしばしばある。実際、宇都宮候補も、前回選挙に出馬を表明した当初の政策はジェンダー視点が乏しかったが、女性の方々の働きかけで改善されたりしている。

私には、上野さんが今回、「脱原発」シングルイシューを唱えておられる理由がわからない。ひょっとしたら、最近「シングルイシュー」が流行していることと関係があるのかもしれない。たしかに脱原発運動ならば、「脱原発」という一致点ですすめるべきだろう(ただし、より有効な運動にするためには、各自の独自の観点や相互の対立点についてもきちんと議論して運動を発展させることも必要だという点も見落としてはならないと思うが)。しかし、知事の権限はきわめて幅が広い以上、原理的に「シングルイシュー」とはなじまないと思う。また、今回の上野さんの「脱原発」の中にフェミニズム視点が入っていないのは、そもそも今の日本では、エコロジーの中にフェミニズムの視点を入れる必要性を説くような「エコロジカル・フェミニズム」(たとえば、私はメアリ・メラー『境界線を破る!』に感銘を受けた)があまり発展していないこととも関係があるのかもしれない。しかし、いずれにせよ、はっきりしたことはわからないが……。

上野さんは、私などとは比較にならないくらい優れたフェミニストであることは間違いない。しかし、今回の一文に関するかぎり、何度読んでも、フェミニズムを放棄しているように思えてならない。

(※)なお、上野さんは、文中で、「それに有権者はシングルイシューだけを選んでいるわけではない。身の回りを直撃するできごとから国政マターまで連続性を持った政策の組み合わせを選んでいる」ともおっしゃっているが、それなら「連続性を持った政策」のパッケージを提示するという話であり、シングルイシュー肯定とは矛盾している。また、ある問題(たとえば原発問題)に関する理解の深さが自動的に他の問題(たとえば女性問題)への理解を保障するものではない以上、ある程度、それぞれの争点に独自性があることも無視してはならないだろう。

立命館大学の講師に対する誹謗中傷に関する同大学の声明についての同大学への手紙

立命館大学の講師に対するネット上での誹謗中傷・民族差別の件(NAVERまとめ「【デマ】立命館大学が朝鮮学校無償化の嘆願書を学生に書かせた?」など参照)について、同大学が1月15日に出した声明は本末転倒だという感じがしてならないので、昨日、立命館大学に以下の手紙を送りました(以下では、読みやすいように、実際の手紙とは異なり、段落と段落の間を1行空けてあります)。


立命館大学御中
 
 私は、貴大学の大学院の卒業生の遠山日出也と申します。以前、貴大学で、短い期間ですが非常勤講師をさせていただいたこともあります。

 さて、先日来ネット上で話題になっている「立命館大学の講師が出席カードとともに朝鮮学校の無償化を求める嘆願書を学生に書かせている」というデマの件についてですが、貴大学は、昨日、「授業内における学生団体の要請活動への本学嘱託講師の対応について」という文章をウェブサイトに掲載なさいました。

 私は、この文章が最初に事実関係を説明しておられる点については、あらぬ疑いを解いたという意味があると思います。

 しかし、それらの事実関係からは、その次に述べておられる「結果として受講生に同講師が嘆願書への署名を求めたかのような誤解を与えてしまいました」という結論は出てきません。ですから、「大学として不適切だと考え、講師に対し、指導を行いました」というのは筋が通らない話だと思います。もちろん、こうした政治的問題を扱うには力量や経験、工夫が必要でしょうから、その講師の方の今回のやり方には改善の余地もあったのかもしれませんが、それはあくまで教育実践における研鑽とか助言とかいう次元の問題であり、大学がウェブサイトで「心からお詫び申し上げます」とか、「今後、このようなことが再発しないように徹底してまいります」とかいったような、何かセクハラのような不祥事でも起こしたかのような表現をするのは不適切だと思います。

 より大きな問題は、今回の貴大学の文章には、講師に対するデマや誹謗中傷に対して抗議する内容がまったく含まれていないことです。現在、その講師の方のお名前をインターネットで検索してみると、数ページにわたって、事実を歪曲した無責任な誹謗中傷――嘆願書を「書かせた」とか「単位と引き換え」とか――だらけのサイトが出てきます。私はインターネットで同種の被害に遭われた方を何人か存じ上げておりますが、そうした方々は、みなさん非常な苦痛を強いられていました。もしあなたやあなたの娘さんがこうした誹謗中傷の被害に遭われても、平気でいらっしゃれるのでしょうか?

 しかも、その講師の方に対するデマや誹謗中傷の中は、明らかな民族差別的言辞(「韓国に強制送還しろ」とか「北朝鮮の工作員」とか「チョン」とか)も含まれています。また、そもそも今回ネット上で騒ぎ立てられ、貴大学が声明を出すにまで至ったのは、「朝鮮学校無償化」問題だったからだという面が否定できません。他の政治問題だったら、けっしてこれほどは騒ぎ立てられなかったでしょう。すなわち、今回の問題に関しては、民族差別という要素が含まれていることも見逃してはならいと思います。

 立命館大学の教職員が、デマや誹謗中傷、民族差別の被害に遭われた。それは、けっして私生活上での話ではなく、職場での職務遂行上の行為であった。それなのに、職場である立命館大学は、抗議を全然せずに、むしろその方の落ち度(がかりにあったとして、それ)だけを大げさに謝罪するというのですから、立命館大学は、働いておられる教職員の方々にずいぶん冷たい、と感じざるをえません。

 ですから、私は、貴大学には、講師の方に今回の件をお詫びするとともに、講師の方に対するデマ、誹謗中傷、民族差別に抗議する声明を出していただくようにお願いいたしたく思います。
2014年1月16日
遠山日出也
(住所、電話番号、メールアドレスも記載したが、ここでは略す)

さるくびとシネマ1月上映会

以下のような上映会がおこなわれますので、ご関心のある方はぜひおいで下さい。私も両日とも参加させていただきます。


[1日目(2014年1月25日)]

「最後の吉原芸者四代目みな子姐さん―吉原最後の証言記録―上映会」

さるくびとシネマ第15回特別企画です。ドキュメンタリー「最後の吉原芸者四代目みな子姐さん」の上映だけでなく、京都・島原遊廓の司太夫さんをお招きしての舞いの披露、安原真琴監督によるインタビューなど盛りだくさんの内容になっています!

(安原監督より)
新年は賑やかに幕を開けます!京都での上映は初めてです!
さるくびとシネマ第15回上映記念として、25日をみな子姐さんデーにいたしました。全3回上映します。

そしてなんと初回はゲストに、京都・島原遊廓の司太夫さんをお迎えします!
ワークショップとして島原遊廓のお座敷で披露されている舞を舞ってくださいます。
また司太夫と監督のトークも。

☆これは、夢の東西廓芸者対談です!(監督が吉原芸者みな子姐さんの口寄せ巫女的な役割!?)。
第2回と第3回の上映は安原監督に、制作秘話やみな子姐さんのエピソードについて話していただきます。

そして、破格の料金もポイントです!
初回2000円、それ以外は1000円です!第15回記念ならではの料金です。どうぞお気軽にお出かけください!

場所: 京都市東山いきいき市民活動センター 和室および二階集会室
時間: 初回(和室) 13:00ー15:30 12:30開場 ゲスト司太夫さん
ーー: 第2回(和室)16:00ー17:30 15:45開場 トーク安原眞琴さん
ーー: 第3回(二階)19:00ー20:30 18:30開場 トーク安原眞琴さん

参加費 参加料金: 初回 2000円 / 第2回・第3回 1000円
講師 司太夫さん、安原真琴さん
定員 和室30人、集会室80人
日時 2014年1月25日
場所 京都市東山いきいき市民活動センター(一階・二階)

■最寄駅・バス停(各駅、停留所より徒歩5分)■
【市営地下鉄東西線】三条京阪・東山 各駅
【京阪本線】三条駅
地図

申込方法 いずれも先着50人様になります。メールでお申込みください。amenic1102pyahoo.co.jp
さるくびとシネマ
事務局 amenic1102@yahoo.co.jp 
主催 グローバリゼーションとひとの移動映画祭

参考までに、安原さんのHPも掲載させていただきます。
日本文化研究所~江戸のサブカルチャーを未来に~

[2日目(2014年1月26日)]

青し時雨(あおししぐれ)(飯塚花笑監督)

この作品は前作『僕らの未来』で、性同一性障害の高校生の学校や家族との葛藤を描いた自伝的作品で共感を得た飯塚花笑監督の新作。考えてみれば、愛、性志向、進路、家族…人生の20歳前後は何かと悩ましい。若者たちがおとなになっていく季節、あるいはおとなになれない季節、その葛藤は、ずっとこころのなかに、静かにときには激しく雨が降り続いているようなものかもしれない。

飯塚監督の前作をもう一歩進めたかたちで若者たちの世界はひろがっているが、それは葛藤を過ぎて自分で決めていくプロセスなのだろうか。…郊外にある古い民家を利用したシェアハウス「赤い子馬荘」に吸い寄せられるように集まった面々。自分が自分であることと、家族の期待や無理解とのギャップ…そして、変わっていく町。若者たちの震える心の繊細さを黙って抱きしめていたくなる作品。

料金は監督トークこみ1000円。

第一回上映 11:00-13:00
監督トーク 13:15-14:15
第二回上映 14:30-16:30

場所 京都市東山いきいき市民活動センター(二階)

■最寄駅・バス停(各駅、停留所より徒歩5分)■
【市営地下鉄東西線】三条京阪・東山 各駅
【京阪本線】三条駅
地図

◎さるくびとシネマのブログもご覧ください。
さるくびとシネマ

第4回WAN総会とシンポジウムに参加して

さる5月26日、名古屋市男女共同参画推進センター「つながれっとNAGOYA」で、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN) の第4回通常総会とシンポジウムが開催された。私がとくに関心を持った点を中心に、感想を述べてみたい。

一 第4回WAN総会

総会には51人の方が出席され、委任状を提出された方と合わせて定足数を満たしたので、総会は成立した。

1.2012年度事業報告をめぐって

最初に「2012年度事業報告」があり、WANが認定NPO法人になったことが報告された。

2012年度末(2013年3月)で、WANの会員は460名近くになり、2013年4月のサイトへのアクセスは、ページビューで約10万2000になったとのことだった。この数値を2年前の第2回総会時の発表と比べてみると、会員数は、2年前は約300名(2010年度末)だったので、1.5倍以上に伸びている。

しかし、アクセス数は、すでに2年前の総会で「10万直前」だと報告されており、同年中に「10万を超えた」という報告もあったので、その頃からほとんど伸びていないと言える(1)。アクセス数が伸びていないのは、毎日更新される記事の数や内容があまり変わっていない(と思う)ことと関係があろう。アクセス数の増加を至上目的にする必要はないが、アクセス数を伸ばすには、もっと記事の数を増やしたり、読まれる記事を増やしたりすることが必要だ。私見では、エッセイや報告などだけでなく、自分の主張をもっと強く訴えるような記事を増やす必要があるのではないかと思う(この点は私も努力したい)。

また、携帯からのアクセスが1/3だったとのこと。こうした状況の変化にも対応が求められているのだろう(このことは、WANだけの問題ではなく、私自身のブログなどについてもだが)。

また、一部の記事にコメント欄が開設されたことが報告された。「一部の記事」といっても、投稿者が望みさえすればコメント欄は開設されるということであり、コメント欄の開設に制限を加えるという話ではないので、これで十分であろう。今回のコメント欄の開設は、WANサイトの双方向性の拡大にとって、大きな前進だと思う。今のところ、とくに「荒らし」もなく、平穏な意見交換が進められていると思うので、多くの方はコメント欄を開設して良かったと思っておられるのではないだろうか? ただ、もう少し、異なった立場からの真摯な議論のぶつかり合い――できれば建設的なもの――があるといいと思う。もっとも、そうしたことは、それほど簡単なではないのだろう。今後、実現できるように私も努力したい。

以前、拙ブログの「WAN争議が提起した課題と現在のWANの問題点」というエントリで述べたことのうち、昨年は「総会の時間が短すぎる」という点を改善していただき、今年は「サイトの双方向性の乏しさ」という点を改善していただいたわけである。また、上の私のエントリの中では、「上野千鶴子web研究室」というコンテンツがグローバルメニューに掲載されていることは、WANが上野さんを特別扱いしている感じを与えると述べたが、昨年度から、グローバルメニューは「女性学研究室」になり、「上野千鶴子web研究室」はそのサブメニューになった(この点は、べつに私の意見とは関係ないと思うが)。

拙ブログの上のエントリでは、2010年のWAN争議における理事会の謝罪事項(「組合及び組合員と事前に相談・協議がなかったこと」など)をWAN-NEWSでも公表して、今後そうしたことを起こさない決意や再発防止のための保障を示すことなども求めているが、そうしたことを含めて、他の点もとくに非現実的なことを述べたつもりもないので(やり方には工夫が必要な事項もあろうが)、今後何らかの形で実現できるように努力したいと思う。

事業報告では、他にもさまざまな企画をおこなったことが報告されたが、それらの大半はWANサイトを見ればわかることでもあり、ここでは省略させていただく。

現在、ボランティア登録者は110人であり、今年はボランティア保険に入ったとのことも報告された。

質疑応答では、私は、総会の1週間ほど前に提出した、「WAN『コメント投稿規程』に関する意見」について述べた。それに対しては、牟田和恵副理事長から、「その件は、すでに文書で提出していただいているので、私たちは目を通している。コメント欄については、いま試行錯誤の最中なので、いろいろ意見を聞いて、今後見直す」とのご答弁があった。この件に関しては、総会後の6月1日、一部、私の意見に沿った見直しをしていただくとともに、他の点については今後の様子を見て、必要に応じて検討するという回答をいただいた(「『コメント投稿規程』に関する私の意見に対するWANの回答」参照)。私も、現在の状況では、それで十分だと思う。早急に改善していただいてよかったと思う。

2.2012年度会計報告など

WANは年間約500万の予算を使っているとのことだ(多いのは、サイト運営費132万、事務所費72万など)。当日は会計報告や予算案についてはじっくり考えられなかったが、これだけの予算を使っているのだから、来年からは、できれば会計報告や予算案についても質問してみようと思った。

3.定款の一部改定

細かな字句上の変更のほか、理事の人数が「7~15人」から「7~20人」に変更された(定款[ただし、8月5日現在掲載されているのは、改定前のもの])。理事を増員するのならば、若い世代の方々の関心や利害を反映させるために、若い世代をもっと思い切って登用する、または若い世代の方々に立候補していただきたいと思う(本当は増員しなくても、そうしたほうがいいと思う)。

4.2013年度事業計画をめぐって

「2013年度事業計画(案)」では、「質量ともに限界にきたサイトのリニューアル」、「他団体との連携の形成」、「組織の遠心力と求心力をどう保つかや、会員とボランティアへ何をフィードバックしていくかも課題であること」などが示された。

質疑応答では、私は、昨年に引き続き、「WANサイトに、組織の運営システムを示してほしい」という要望を出した。理事会や総会については定款に書かれているのだが、それ以外の点については、ふだんどういう組織運営をしているかがよくわからないからである。

私は、「どのような組織のシステムになっているかを示すということは、組織の透明性を確保したり、責任の所在を明らかにするうえで必要だと思う」「昨年の総会では、私とは別の方が、『WANはピラミッド型組織ではなく、新しい組織を目指してほしい』という意見を出されたし、上野理事長もつとに『フェミニズム的組織論』を打ち出しておられるが、それが具体的にどういう組織になっているかがわからないといけないと思う」といったことを述べた。

上野千鶴子理事長は、「それが課題であることは十分に承知している」と述べられた。上野理事長は、「いま、組織の急成長にそうした課題が追いついていない状況で、試行錯誤をしているが、組織体制を示すことは、たしかに組織の透明性を確保したり、責任の所在を明らかにするうえで必要だから、来年度にかけて整備したい」(正確な引用ではなく、だいたいの内容です)といった答弁をされた。

また、私は、以前から訴えている「投稿規程に関する要望」を簡単におこなった(昨年も訴えた点については、「WANの第3回総会とシンポに参加して」の4「投稿規程の字数とジャンルの緩和など要望」参照)。この点については、牟田副理事長が、検討するとのご返事をなさった。

5.会員からの発言が少なかったのは残念

残念だったのは、総会で私以外の発言者が少なくて、時間が余ったことである(10~15分程度だが)。昨年から総会の時間が1時間半になったのは、私が要望したためなので(上野理事長はそうおっしゃっていた)、残念である。上野理事長も「1時間半に延ばしたのだから、皆さんのご意見を」を言ってくださったのだが、結局時間が余ってしまった。私自身も本当はもっとたくさん質問したいことがあったのだが、私1人が場を独占してはいけないし、他の方のご意見もうかがいたいと思って、発言時間が長くなりすぎないようにしたのであるし(私の発言時間は、合計しても5~6分程度にすぎない)、もっと多くの方に発言していただきたかった。すべての会員が集まって直接話し合える機会は、総会しかない。また、総会には、理事も皆さん出席されている。WANは、その活動の成果のほぼすべてが何らかの形でウェブサイトに表れているのだから、たとえば、WANサイトについての感想や要望なら、誰でも発言することが可能だと思うので、来年からはもっと多くの方が発言なさっていただきたいと思う。

6.会員=株主論について

上の点とも関連するが、午後のシンポジウムで、上野理事長が「企業で言うと、ユーザーは消費者、会員は株主」(動画の01:30:40頃~)と発言なさった。現在の社会では、「株主オンブズマン」や電力会社の株主総会での「脱原発」提案に見られるように、株主は社会的に非常に重要な役割を果たしている。そうした意味では、私も、会員には「株主」としての自覚が必要だと思う。

ただし、「会員=株主」論には、やや違和感も覚えた。企業の株主が投資や資産運用のために株を買っていると違って、WANの会員は、純粋にWANの発展を望んで会員になっているのだから、会員を「フィードバック」の対象にするだけでなく、会員に対して、より積極的に事業への参画を促す取り組みがあってもいいし、それを前提にして組織運営をすべきではないかと思う。「会員さま」という呼び方がWANサイトの一部で使われており(例:「法人会員さま情報」)、これは、企業が「株主さま」と言うのと同様の感覚で使われているのであろうが、会員を仲間とみなさずに、「敬して遠ざけている」ようで、好ましくないと思う。もっとも、最近は「会員の方」「会員の皆さま」という言葉の方が多いようなので、この点は改善されつつあるようにも見えるが。

7.ボランティアの採用や権利について規定を作ることも必要では?

また、「会員=株主」だとすると、「ボランティア=社員」ということなると思うが、定款には「会員」と「役員及び職員」のことしか書かれていない。たとえば、定款には、会員の入会については詳細な規定があるが(「第7条 会員の入会については、特に条件を定めない。/ 2 会員として入会しようとするものは、会員の入会申込書により、理事長に申し込むものとし、理事長は、正当な理由がない限り入会を認めなければならない。/ 3 理事長は、前項のものの入会を認めないときは、速やかに、理由を付した書面をもって本人にその旨を通知しなければならない。」)、ボランティアの登録(採用)については、何の規定もない。私は、昨年1月、ボランティアの申し込みメールを送ったことがあるが(WANに対する私のボランティア申し込みメール)、何の返事も来なかった。これは、単に仕事のマッチングが合わなかったからかもしれないが、ボランティア登録についても、ちゃんと規定を作る必要があるように思う(定款で定めるか否かは別にして)。また、より重要なのは、ボランティアの権利について定めた規定を作ることだろう。

ひょっとしたら、ボランティアは、第20条の「職員」に当たるのだろうか? だとしても、職員については、「この法人に、事務局長その他の職員を置く。/ 2 職員は、理事長が任免する。」という規定しかないので、不十分であろう。

二 シンポジウム「NPOのチカラ2013――それは『女縁』から、はじまった!」

午後のシンポジウム「NPOのチカラ2013――それは『女縁』から、はじまった!」(WANと参画プラネットの共催)は、以下のような内容だった。

・上野千鶴子(NPO法人WAN理事長)「それは『女縁』から、はじまった!」
・石井布紀子(NPO法人さくらネット代表理事)「NPOを支える社会の変化は?」
・渋谷典子(NPO法人参画プラネット代表理事)「『女縁』NPOの可能性は?」
・「10年+(プラス)プロジェクト!始動」

このシンポジウムについては、録画がWANサイトに掲載されているので(会場からの質疑応答を除く)、全体については、その録画をご覧いただきたい。また、全体の概略として、「NPO法人参画プラネット☆シンポジウム『NPOのチカラ2013』」も掲載されているので、ご参照されたい。

1.NPOにおける有償・ボランティア労働について

2010年には「非営利団体や市民運動における雇用や無償・ボランティア労働を考える―ユニオンWANの事例から」集会や「フェミニズム運動や研究組織における非正規・無償労働問題を問い直す」ワークショップがおこなわれ、私も参加したり、その記録を読んだりしたが、このシンポジウムでも、NPOにおける雇用(有償)労働やボランティアが一つの話題になった。

渋谷典子さんは、「私が収入を得ているNPO法人『参画プラネット』は、センターの指定管理者事業の収入が多くて、年間4500万~5000万ある。その中で2000万ほどの人件費があり、それをどう分配するか、誰にそのお金を渡すか、誰を採用するかを[参画プラネットで]議論した。私たちはいったん専業主婦になって社会につながろうと思ったとき、仕事がなかった。だから、そういう人たちを対象に、その2000万を分配しようと決めた。8年間、ここにいる間にスキルアップして(ここに居つくことはNG)、出て行ってもらうというプロジェクトをした。見事にさまざまな女性が育っていった。女縁にもとづくNPOでは、シングルマザーに多く給料を渡すというやり方もできる」といった話をされた(以上は、録画01:41:00~。完全な文字おこしではなく、大体の内容です。以下同じ)。

それに対して、上野千鶴子さんは、WANは年間約500万円の財政規模のNPOであり、参画プラネットの4500万円とは9倍の開きがあることを、「そっちはbigNPOで、こっちは弱小零細NPO」と言って強調された。上野さんは、「だけど、その4500万は名古屋市民の税金であり、その税金を4500万getするための苦労をこの人たち[渋谷さんたち]はしていない。役人もしていない。だから役人は平気で無駄遣いをするし、もっと安上がりにしようとして、不利な条件をこの人たちに押し付けている。大事なのは官に頼らない、官に振り回されない、官から自立できる準備をするということ。だから官の言いなりにもならない。私たちには官のお金はビタ一文入っていない。こんなこと言っちゃいけない。今日は、つながれっとNAGOYAに協賛していただいています」ということを述べられた(以上は、録画01:43:30~)。

上野さんの話を受けて、石井布紀子さんは、「どうしよう」と戸惑いつつ、「財政規模が600万くらいの団体では、オールボランティアの場合と、お一人くらいパートや専従を置いている場合があるが、その両者の活動の量には、すごく差があって、600万の規模だと、オールボランティアの方が、活動量が多い」という発言をなさった。この発言を聞いた上野理事長は両手でVサインをなさった。石井さんは、参画プラネットについては、「2000万円というのは、人件費率が高めだが、これは、人が資産の活動だからですね」とおっしゃった。それに対して、渋谷さんは「女縁のネットワークが私たちを応援してくださっているから、市民の税金をたくさん使わないですんでいる」という面を語られた(以上は、録画01:47:10頃~)。

たしかに、参画プラネットとWANとでは、財政規模が違うから、異なったやり方をしているという面が大きい。この2つの団体は、もちろん性格も異なるだろう。上野さんは、Vサインをなさったところを見ると、WANの場合は、少なくとも現在の財政規模の場合は、すべてボランティアでやる体制を非常に肯定しておられるようだ。

ただ、私は、NPOの場合は、当然のことながら、「活動量」の多さだけが評価の基準ではないと思う(仕事づくりという面もあるし、参加者が活動上で自己の解放ができているかとか、活動のあり方の質とかいう面もある)。また、昨年のWAN総会でも、「人件費を増額して、専従を置いてほしい。ボランティアで回すことは限界にきている」という意見が出ており、上野理事長も、その点を検討するむね答弁なさっている。つまりWANの中にも(上野さん自身の中にも?) さまざまな考えがある面がある。「人が資産」である点は、NPOの規模の大小にかかわらず同じだ。以上のような意味では、現状においても、すべてボランティアという体制を絶対化するべきではないだろう。

上野さんは「WANの役員をやっていて、得になることは何もない。楽しいからやっている」とおっしゃった(動画01:48:50頃~)。まさに「ボランティア」としてやっておられるわけである。しかし、組織がある程度大きくなったり、役員が社会的地位を持っている人だったりした場合は、そこにどうしても権力関係が生じがちなので、ボランティアメンバー全員の労働が本当にすべて自発的であることを保障する体制(ルール)のようなものを作ることが課題になるように思う。この点は、私が「WAN争議が提起した課題と現在のWANの問題点」の2「ボランティアについて」で述べたとおりである。

私にはWANの運営の実際のシステムや個々のボランティアの方々の意識がわからないので、具体的な提言はできないが、以上のように考える。

話は変わるが、渋谷典子さんは、ご自分の報告の中で、パワーポイントで、下のような図を映された(録画01:08:23頃~)

「私」からのコミットメントに対する、NPOの姿勢

○ボランティア、有給労働者・有償ボランティア
→定期的な役割の見直しと確認
→労働法との関係(脱法行為とならない運営)
ボランティアの安全保障⇔労働者の安全保障

渋谷さんは、上の図について、これは「私の研究テーマですけど」と言われたうえで、パワポの文字を読みあげるだけでなく、「『有償ボランティア』という言葉は非常に危うい言葉で、労働法の世界では非常に危うい」、「労働法学者に言わせれば、『NPOの人たちはずいぶん脱法行為をしているのではないか』という。だから、私は、研究の世界では肩身が狭い。『女たちをただ働き化しているのではないか』『サービス残業のようなことをさせても、自発的な活動にしているからお金を払わないで済んでいるのではないか』と、研究の中では言われている」といったこともおっしゃった。

渋谷さんは、「いまNPOの活動と労働法との関係について、難行苦行の論文執筆をしている」とも述べておられた(録画57:28~)。きっとさまざまな理論や立場がおわかりになるから、苦労しておられるのだろう。渋谷さんはすでに、「NPO『活動者』と労働法についての予備的考察――ジェンダー視点を踏まえて」(『ジェンダー研究』10号[2007])という論文も発表されているが、今回の論文はどのようなものになるのだろうか。従来の労働法研究の蓄積やご自身のNPOでのご経験などとあわせて、NPOの労働者のさまざまな声も調査なさったうえでの論文になることを期待させていただきたい。

また、石井布紀子さんも、ご自分の報告(録画28:30~)の中でNPO職員の給与問題を幾つかの視点から取り上げておられた。NPOにおける労働や賃金の問題は、今後の焦点の一つになっていくことは間違いないと思う。

といっても、今回のパネラーの方々は、皆さん、NPOの理事長・代表理事でいらっしゃった。今後、労働問題を本格的に論じる機会も設けていただきたいが、その際には、労働者やボランティアの代表(組合関係者など)も加わって議論する必要があるだろう。

2.「プラットフォームとしてのWAN」について

渋谷さんは、女縁を生かすために大事なものの一つのは「プラットフォームだと思います。出会える場所。」だと指摘なさった上で、次のように述べられた。「インターネットという空間にプラットフォームが出来たらすばらしいと考えている。私はプラットフォームとしてのWANをこれからも私の活動の中で大切にしていきたい」「WANは、プラットフォームを越えて、『駅ナカ』(駅構内にある多種多様な商業スペース)のようにバリエーションがあって、楽しいことがたくさんある場所だ。『駅ナカ』のように、いろいろなメニューがある」(録画01:12:50~)。

しかし、私は、個々のサイトではなく、ある意味で、インターネット空間全体が「プラットフォーム」なのだと思っている。なぜなら、インターネットは、時間や空間を越えて、同じパソコンの画面の中で、すぐさま、どこにでも行き来できることが特徴だからである。WANが「駅ナカ」だとしても、インターネット上では、現実の世界と違って、駅ナカと他の商店街(=WAN以外のサイト、ブログ、ツイッターなど)との間の往来には、お金も時間もかかならい。いや、インターネット上では、ブックマークやフィードリーダー(RSSリーダー)、リンク集などを使えば、一人一人に合った「駅ナカ」を作ることができるとさえ言える。

また、WANよりも、むしろWAN以外のサイトやブログのほうが、個々の執筆者のメールアドレスなどが明示してあるケースが多い分、出会いを作りやすい面がある。私の場合も、インターネットを通じて実現した出会いや繋がりの多くは、私のメールアドレス宛にご連絡をいただくことによって始まっている(また、WANにコメント欄ができる以前は、WANサイト以外のほうが、コメントやトラックバックが可能な点でも、出会いや繋がりが作りやすかった)。

さらに、WANの場合、現状では原稿の投稿から掲載まで1週間以上かかる(私の経験では)点や、論争に消極的な点も――「不毛な論争を避ける」という投稿規定はともかく、執筆者どうしの真摯な論争・建設的な論争、対話なども非常に少ない――プラットフォームとしての価値を減じている。

もちろん総会やシンポ、ボランティアチームのようなリアルの場で出会えば、WANでも大いにつながりはできるが(私もできている)、それはどの団体でも同じであり、とくにインターネット空間とは関係ないだろう。

私も、WANの中にさまざまな女性やフェミニズムに関する文が集積していることや、さまざまな運動体へのリンクがあったり、運動体にアピールの場を提供していることには非常に意味があるし、間接的には出会いにつながる可能性があると思う。

しかし、上で述べたように、WANに「プラットフォーム」独自の機能を発揮させるためには、同じサイトの中にいろいろなメニューがあるというだけでは、弱いと思うのである。もう少し工夫が必要だと思う。

まず、上で述べたように執筆者が原稿の中にメールアドレスを載せるようにすれば(支障がないかぎりは)、出会いの場としての機能が高まろう。私も、次に投稿するときはそうしたい。

また、シンポジウムの討論の中で、ある方が、「女性は子どもを出産した後にフェミニズムに目覚めることが多くて、私の知っている方も、読みにくいのに、ガラケーでWANを読んでいる。そうした方が語り合える場が必要だ」(討論は録画されていないので、ここで記述した内容は正確な記録ではないかもしれないが、だいたいこうした内容のことをおっしゃったと思う)と発言された。彼女たちが語り合えるような場、それはすなわち、掲示板的なものになるのだろう。しかし、誰でも書き込める掲示板では、プライバシー保護や「荒らし」の面が心配で、管理が大変だから、内輪のSNSが最適のように思う。その点から見ると、Macska(小山エミ)さんが、3年以上前に、【WAN2.0】として提唱していた下のようなことが、検討に値すると思う。

せっかく個人アカウントが作れるようになっているのだから、ソーシャルネットワークサイトのようにしてユーザがエッセイや書評や活動報告などユーザ生成コンテンツをアップロードしたり、気になる他のユーザの記事をフォローしたり、感想や意見を交わすことができるようにしてはどうか。もともとWANでは掲示板のようなものが作られると予告されていたのだけれど、さすがに管理の困難さを考えたのか、いつの間にかその企画自体が「なかったこと」にされてしまったのだけれど、SNSに付属させるかたちであればユーザ同士の交流も可能なはず。もし本当にWANを使えるサイトにするなら、この路線が本命だと思う。基本的な機能は無料で使えるようにして、より深く使いこなすには有料アカウントを取得してください、みたいな形で資金も調達できると思う。(2)

3.F-WANをめぐって

シンポジウムでは、F-WAN (Fund Raising WAN)というプロジェクトを始めることも発表された。

F-WANとは、ごく簡単に言えば、今回WANが認定NPO法人になったことによって、寄付した人が所得税の寄付控除を受けることができるようになったから、今後は広く寄付を集めて、全国の女性たちの活動を支援する仕組みを作ろうというプロジェクトである。ただし、WANの財政基盤はまだ脆弱だから、まずはWAN本体サイトの活性化のために寄付をお願いしたいとのことだ(「F-WAN、始まります!」)。

6月21日、このF-WANについて、ツイッターで、山口智美さん(以前、NPOで他団体に助成を出すプロジェクトの有給スタッフとして働いた経験がおありだそうだ)とクーコさんとの間で、簡単に要約すれば、「他団体に助成を出すNPOのスタッフの仕事は非常に大変なのだ。だから、他団体への助成以前に自分の団体で有給スタッフを雇える体制をつくらないといけない。他団体が人件費にも使えるような助成にするためにも、自分のスタッフも有給にしなければならない」という内容の会話が交わされた(3)

私は、助成が必要な女性たちの活動はたしかに多々あると思う。たとえば、私は女性運動の高齢化が気になっているので、若い女性の主体的活動を金銭的に支えることができればいいと思う。しかし、シンポジウムでも上野さんが「WANは弱小零細NPOだ」と言っておられたように、他団体への助成はまだ難しい。もっと寄付が増えた場合、果たしてそれをスタッフの有給化(とくに上で指摘されている助成プロジェクトのスタッフの有給化)に使うか、他団体への助成に使うかも一つの選択になるのであり、そこで前者の選択肢も検討してほしいと思うのである。

というか、外部の人に寄付を募るには、その使途をもう少し明確にしてから募ったほうがいいのではないだろうか??

私がもう一つ気になるのは、他団体への助成が公平中立の立場でおこなわれるかどうかである。たとえWANに批判的な側面が大きい活動でも、助成を申し込めば、公正に審査されるのだろうか? WANの助成は、個人の私財や遺産をもとにした基金から出すのではなく、WANが認定NPO法人になったことを活用して広くお金を集めるものなので、とりわけ公共性が高いから、この点は非常に重要だと思う。

以上のようなことは、F-WANの方々はすでにおわかりかもしれないが、念のために書かせていただいた。

(1)ただし、総会では、「昨年同期のほぼ2割増」であると述べられた。月による変動は当然あるだろうから、ひょっとしたら毎年4月は落ち込むということなのだろうか? また、5月には新しくミニコミ電子図書館が出来たし、コメント欄が設けられるなどの変化があったので、現在ではもう少し伸びているのかもしれない。
(2)macska「労働争議でグダグダになってるWANを再生させる5つのアイディア」macska dot org2010年3月3日。
(3)そのツイートは、以下のとおりである。

yamtom/山口智美 @yamtom
@kuko_stratos 私自身が以前、他団体に助成を出すNPOのスタッフ(有給)をやっていたので、どれだけ大変な仕事か身にしみてわかっている面があるんですよね。まずは他団体以前に自分の団体でしっかり有給スタッフを雇える体制をつくらないことには、相当な無理がかかる事業のはずで。

クーコ/ @kuko_stratos
@yamtom ほんまにほんまに。助成を出すのはたいへんです。でも、出してもらう方としても、担当がボランティアなのに、自分とこが有給有償がっちり、ってのって、やりにくくないかなあ…かくして、女がらみの活動はどんどん「うつくしきボランティア」で占められていくというね…

yamtom/山口智美 @yamtom
@kuko_stratos 助成出すのであれば、人件費に使える助成にしないと「美しいボランティア」状態でどんどん占められていく展開になっちゃいいますよね。。

クーコ/ @kuko_stratos
@yamtom どうしても草支援団体とかだと、まさに手弁当状態だと思うので、むしろ出す方が「ちゃんと人件費払いよ。なぜなら…」って“啓発”せなあかんとこですよ…。WANが自立して給料もちゃんと出してまわるなら、それが一番の励みと好事例になると思うのですが…。

yamtom/山口智美 @yamtom
@kuko_stratos 同感です。この新しいプロジェクトを始める前に、まずは自団体でモデル見せてほしい。。

(以上は、yamtom/山口智美2013年6月21日-23:03以下のツイートより)。

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遠山日出也
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これまで「中国女性・ジェンダーニュース+」の中で取り上げてきた日本の社会や運動についての記事をここに書くようにしました。ご連絡は、tooyama9011あっとまーくyahoo.co.jpにお願いいたします。

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