社会の片隅から

これまで「中国女性・ジェンダーニュース+」で取り上げてきた日本の社会や運動に関する記事を扱います。

立命館大学の講師に対する誹謗中傷に関する同大学の声明についての同大学への手紙

立命館大学の講師に対するネット上での誹謗中傷・民族差別の件(NAVERまとめ「【デマ】立命館大学が朝鮮学校無償化の嘆願書を学生に書かせた?」など参照)について、同大学が1月15日に出した声明は本末転倒だという感じがしてならないので、昨日、立命館大学に以下の手紙を送りました(以下では、読みやすいように、実際の手紙とは異なり、段落と段落の間を1行空けてあります)。


立命館大学御中
 
 私は、貴大学の大学院の卒業生の遠山日出也と申します。以前、貴大学で、短い期間ですが非常勤講師をさせていただいたこともあります。

 さて、先日来ネット上で話題になっている「立命館大学の講師が出席カードとともに朝鮮学校の無償化を求める嘆願書を学生に書かせている」というデマの件についてですが、貴大学は、昨日、「授業内における学生団体の要請活動への本学嘱託講師の対応について」という文章をウェブサイトに掲載なさいました。

 私は、この文章が最初に事実関係を説明しておられる点については、あらぬ疑いを解いたという意味があると思います。

 しかし、それらの事実関係からは、その次に述べておられる「結果として受講生に同講師が嘆願書への署名を求めたかのような誤解を与えてしまいました」という結論は出てきません。ですから、「大学として不適切だと考え、講師に対し、指導を行いました」というのは筋が通らない話だと思います。もちろん、こうした政治的問題を扱うには力量や経験、工夫が必要でしょうから、その講師の方の今回のやり方には改善の余地もあったのかもしれませんが、それはあくまで教育実践における研鑽とか助言とかいう次元の問題であり、大学がウェブサイトで「心からお詫び申し上げます」とか、「今後、このようなことが再発しないように徹底してまいります」とかいったような、何かセクハラのような不祥事でも起こしたかのような表現をするのは不適切だと思います。

 より大きな問題は、今回の貴大学の文章には、講師に対するデマや誹謗中傷に対して抗議する内容がまったく含まれていないことです。現在、その講師の方のお名前をインターネットで検索してみると、数ページにわたって、事実を歪曲した無責任な誹謗中傷――嘆願書を「書かせた」とか「単位と引き換え」とか――だらけのサイトが出てきます。私はインターネットで同種の被害に遭われた方を何人か存じ上げておりますが、そうした方々は、みなさん非常な苦痛を強いられていました。もしあなたやあなたの娘さんがこうした誹謗中傷の被害に遭われても、平気でいらっしゃれるのでしょうか?

 しかも、その講師の方に対するデマや誹謗中傷の中は、明らかな民族差別的言辞(「韓国に強制送還しろ」とか「北朝鮮の工作員」とか「チョン」とか)も含まれています。また、そもそも今回ネット上で騒ぎ立てられ、貴大学が声明を出すにまで至ったのは、「朝鮮学校無償化」問題だったからだという面が否定できません。他の政治問題だったら、けっしてこれほどは騒ぎ立てられなかったでしょう。すなわち、今回の問題に関しては、民族差別という要素が含まれていることも見逃してはならいと思います。

 立命館大学の教職員が、デマや誹謗中傷、民族差別の被害に遭われた。それは、けっして私生活上での話ではなく、職場での職務遂行上の行為であった。それなのに、職場である立命館大学は、抗議を全然せずに、むしろその方の落ち度(がかりにあったとして、それ)だけを大げさに謝罪するというのですから、立命館大学は、働いておられる教職員の方々にずいぶん冷たい、と感じざるをえません。

 ですから、私は、貴大学には、講師の方に今回の件をお詫びするとともに、講師の方に対するデマ、誹謗中傷、民族差別に抗議する声明を出していただくようにお願いいたしたく思います。
2014年1月16日
遠山日出也
(住所、電話番号、メールアドレスも記載したが、ここでは略す)

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遠山日出也
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